Twitterで一度は見るであろう陰謀論。もしそれに家族が染まったらと想像したことがある人はいるだろうか。おそらく大半の方はこんなの誰が信じるんだろうとスルーすることであろう。それが正常だし自分もそうだった。自分の親が陰謀論に染まり、反ワクチン反マスクになるなんて想像もできなかった。
すべての始まり
昨年のちょうどワクチン接種が広まり未成年の接種が始まった頃の話だった。母親が新型コロナワクチンの誤情報を信じるようになったことにある日気づいた。そして私の家に接種券が届いた時、それは決定的になった。母親は私にワクチンを打たせないと言うのだ。接種券は捨てると主張する。不思議なことに自分はその頃まだこの問題の大きさに気づいていなかった。今振り返ればこの頃になんとかしておけばまだ後戻りできたんじゃないかと後悔しているが、親が陰謀論に染まっても現状をすんなり受け入れ対処できる人間なんてそういないのかもしれない。
エスカレートする陰謀論
最初は反ワクチンだけだった。mRNAワクチンは治験中だとか死者が出たとか言うのでソースを聞くが曖昧な返事しか返ってこない。これは何か重大なことが起きてるかもしれないと私は母親が日々見ているウェブサイトは何なのか調べることにした。答えはすぐに出た。ここでは名前は出さないが、女性向けの匿名掲示板だった。どうやら母親は一日のかなりの時間をネットサーフィンに費やし、主にその匿名掲示板とYahooニュース(ヤフコメ)を長時間閲覧しているらしいと分かった。
この時点で私は2つ恐怖に思うことがあった。1つ目はワクチンを打てていないのでコロナに感染しないかという恐怖だった。これは幸い記事を書いている現時点では現実になっていない。手洗いやマスクなど基本的な感染症対策が功を奏したのかもしれない。
2つ目は母親の陰謀論がエスカレートしないかという恐怖だった。残念なことにこれは現実となった。
反ワクチンの次は反PCR
反ワクチンでは飽き足りなかったのか遂にPCRは嘘やコロナはただの風邪などという誤情報までもを主張し始めた。
留年しかけてて忙しかったこともあり、この頃の記憶はもうあんまりない。
さらに反マスクへと発展
今年度に入り新たにマスクには効果がないだの聞いててこっちが恥ずかしくなるような陰謀論を主張し始めた。その主張に父親までもが影響され意図的にマスクなしでコンビニやその他店に行ってたことが判明。1月くらいの自分のメンタルであれば間違いなく通学中に通過列車へと飛び込んでいたがこの段階まで来るともはや恐怖とかよりも軽蔑の感情が勝ってくる。これがいいことなのか悪いことなのかは分からない。もちろんどれだけ慣れても私は人間なので悲しくなることはある。
ロシアのウクライナ侵攻に関するデマまで
この段階で私は相手の主張を理解することを完全に諦めているので詳しくは分からないのだが、ウクライナがどうだのメディアがどうだのまあなんとなく想像はできる。
親戚との集まりが怖い
親戚との集まりで親が陰謀論を主張し始めないか、毎回ヒヤヒヤすることになる。この恐怖はおそらく同じ身の上になった人間にしか分からないだろう。
最大の地獄
これは絶対に現実で他人には言えないことだがここでなら言えるかもしれない。コロナではない普通の風邪を数回引いたがその時はまさに地獄だった。親が意地でも病院に行かせコロナの検査を受けさせまいと騒ぎ出すからだ。行かせてもらえない理由は言うまでもなく親はPCRは虚偽で感染者にでっち上げられると(驚くべきことに本気で)信じ込んでいるからだった。
残薬がある時はまだいいのだが、それがない時は市販薬でどうにかするしかなかった。せめてもの救いは数日間苦しめば親が諦めて病院に行くことを許してくれることだけだった。親の陰謀論を聞きながらコロナかもしれない、誰かに感染させてしまったかもしれないという罪悪感と恐怖を味わいながら療養するしかなかった。
このストレスのせいか昨年までは健康だった私も一回風邪を引くと連続して引くことが増えた。そしてまたストレスが増えて…の無限ループに陥りつつあるので本当にもうどうしようもない。
視点の違い
何回も母親と言い合いになったことがある。その時分かったことはおおまかに次の通りだった。
- 陰謀論者は、普通の人間のことを「普通の人間が陰謀論者を見るような」視点で見る
- 普通の人間と陰謀論者の視点は180度違うので基本的に話が噛み合わない
- 陰謀論がいくら矛盾した理論でもそれを信じて疑おうとしない
まあ結論から言えば陰謀論に染まった人間には基本的に何を言っても無駄という事だった。親子の関係があってもこれなのだからTwitterで陰謀論と一般人や専門家がまともに対話できる訳がない。
陰謀論や反ワクチンは色々な意味で不治の病なのだと感じた。
陰謀論者の心理
陰謀論者は自分の行いは正しいと思っている。自分は悪の組織から人類を守る英雄であり、目標達成のためなら過激な行動も許され、自分を邪魔する人間は悪であると思い込んでいる。人間は自分が正しいと思ってるときに最も残酷なことをするとどこかで聞いたがその通りなのだろう。これが陰謀論者が陰謀論に染まる最大の理由なのかもしれない。恐らく彼等は"正義のために戦ってる"と思い込んでる時間がこの上ない快楽なのだろう。
また一種のフィルターバブルも影響してるのではないかと思っている。掲示板のスレッドやニュースのコメント欄には同じような主張をする人間同士が集まりやすい。仲間同士(陰謀論者同士)で一つの対象を叩くというのは言ってしまえば面白いものだ。いじめがこの世からなくならない理由もこれだが恐らく陰謀論にも少なからず影響している。
少数派は声がデカい
陰謀論者が自分を疑わないもう一つの理由は、まさに少数派は声がデカいせいだと思っている。
ワクチンを危険だと信じ込んでいる人はTwitterやらブログでワクチン危険と戯言を言い続ける訳だが、ワクチンを安全だと知っていて陰謀論者など相手にしない賢明な大多数の人々はわざわざ「ワクチンは安全だ!!」などとツイートしたり反論しない。大抵の人は陰謀論をTwitterや掲示板で見かけてもブロックしてスルーするだけだろう。
これで何が起こるか、お察しの通りだ。掲示板やTwitterで反ワクチン、反マスク発言が目立つ理由はまさにこれだと思っている。
掲示板やSNSの運営者の責任
一旦染まって手遅れならば染まらないよう対策をするしかこれ以上犠牲者を増やさない方法はない。この種の公衆衛生に有害な影響を与える誤情報は本来、掲示板やSNSの管理者によって削除されるべきものだ。しかし最近特にヤフコメなどででは削除されずに拡散されまくっている誤情報を散見する。これは大問題で、下手をすればアメリカの議事堂襲撃事件の悲劇を繰り返すことになる。過激化した陰謀論はしばしば暴力事件にまで発展する。日本でもワクチン接種会場への不法侵入などで既に現実のものとなっている。自社のサービスをまともに管理できないのであればそのサービスは閉鎖されるべきだと思っている。
自分もいつか染まるのか
私が最近考えている問題は自分も陰謀論に染まるのではないかという問題だった。これに関しては正直自分も分からない。半年以上なんとかなってきたので今後もなんとかなるんじゃないかと勝手に信じているが、こんな馬鹿げた嘘と分かりきってる陰謀論を信じる可能性を検討している時点で自分はもう終わりなのかもしれない。
もし染まるとしても、自分はそう簡単には染まらないだろう。ここまで自分が嫌ってきた陰謀論に自分自身が染まるなんて想像できないし、恐らくこんな馬鹿げたものを信じるようになった自分はもう自分ではないと思ってる。
結局何が言いたいのか
親がカルトにハマったとか宗教にハマったとかに加えて最近は自分のように家族が陰謀論者、反ワクチン、反マスクになって困る人が増えていることを多くの人に知ってほしい。
自分はこの一連の騒動で、「普通」がいかに幸せなことであるかを痛感した。失って初めてそのものの大切さに気づくと言われるがまさにその通りだった。
あとQアノンは右翼だから右寄りの人は陰謀論に染まりやすいとか左寄りの人は染まらないとかは誤っている。事実自分の親はバリバリ左に寄った思想の持ち主だったがこうなった。
家族が陰謀論にハマったらどうすればいいのか?
残念なことに陰謀論は一度ハマるともう他人の力では救えないと思っている。相手にせず放置してたらしてたで悪化する可能性もあるし、反論して諭そうとしたら余計に悪化する可能性もある。基本的に陰謀論者に話は通じない。
家族が陰謀論にハマったら、まずは第一に自分に陰謀論に伝染しないようにすることが最善の策だと思う。ワクチンやコロナに関する専門的な知識を分かりやすく解説してくれる医師の方のTwitterがあるのでそれをフォローするとかなどは思いの外効果がある。
まとめ
以上、愚痴なのか近況報告なのか雑記なのかよく分からん記事となった訳ですが、もし自分と同じような状況にある人がいたらMisskeyに生息しているので気軽に声かけてください。